消防計画の作成と届出:
ひな形と訓練の回数
防火管理者の選任が必要な建物では、防火管理者が消防計画を作り、建物を管轄する消防署へ届け出ます。防火管理者が替わったときなど、内容を変えたときも届出が必要です。ひな形は各地の消防局が公開しています。飲食店や物販店などの特定用途では、消火訓練と避難訓練を年2回以上行います。
消防計画とは:誰が作り、どこへ届け出るか
消防計画は、防火管理者が作る、建物の防火管理に必要なことを定めた計画書です。飲食店や店舗、ホテル、病院などは収容人員30人以上、共同住宅や学校、事務所などは50人以上で防火管理者の選任が必要になり、その建物で消防計画も必要になります(特別養護老人ホームなどは10人以上)。選任の基準と講習は防火管理者の選任と講習にまとめています。
- 作る人:防火管理者です。建物の管理について権原を持つ人(管理権原者。会社なら代表者など)の指示を受けて作ります。管理権原者には、防火管理者に消防計画を作らせる責任があります。
- 届出先:建物を管轄する消防署です。仙台市は消防分署・出張所でも受け付けています。「消防計画作成(変更)届出書」に消防計画を付けて出します。
- 時期:作ったら遅滞なく届け出ます。
- 部数と方法:東京消防庁は1部(控えが要るときは2部)、名古屋市と福岡市は2部です。東京消防庁、札幌市、仙台市、名古屋市は電子申請も受け付けています。
内容を変えたときは、変更の届出をします。東京消防庁の小規模用作成例の解説は、主に次の場合を挙げています。
- 管理権原者、または防火管理者(防災管理者)が替わったとき
- 自衛消防隊の組織を統合・廃止したとき、自衛消防隊長が替わったとき
- 事務所から物品販売店舗への用途変更や増築などで、消防用設備等を新しく付けたとき
- 防火管理の業務の一部を外部に委託している内容を変えたとき
札幌市では、変更の届出は変更した部分だけを付けて出すこともできます。
出典:総務省消防庁「令和6年版 消防白書 防火管理制度」、札幌市「防火管理者について」、仙台市「消防計画作成(変更)届出書」、東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出書/消防計画作成(変更)届出書」、名古屋市「(防火管理に係る)消防計画作成(変更)届出書」、福岡市「防火・防災管理関係」、札幌市「消防計画作成(変更)届出【電子申請】」、東京消防庁「小規模用消防計画 解説」(PDF)(いずれも2026年9月28日確認)。
消防計画に書く主な項目
札幌市消防局が「消防計画に定める事項」として挙げる内容を中心に、主な項目を表にしました。東京消防庁の中規模用の作成チェック表も、ほぼ同じ章立てです。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 自衛消防の組織 | 火事のときに消火・通報・避難誘導を受け持つ自衛消防隊の編成と、その運営のしかた。 |
| 火災予防の自主点検 | 火気の使い方や避難経路などを、毎日や定期的に社内で見て回る点検の方法と時期。 |
| 消防用設備等の点検・整備 | 機器点検(6か月ごと)と総合点検(年1回)の実施と、不備が見つかったときの整備。 |
| 避難経路・防火戸の維持管理 | 廊下や階段、避難口に物を置かない、防火戸の前をふさがない、といった管理のしかた。 |
| 収容人員の管理 | 建物に入る人数を適正に保つための管理。 |
| 防火教育 | 従業員に防火の知識や火事のときの動き方を教える方法と時期。 |
| 訓練の実施 | 消火・通報・避難の訓練の種類と回数、実施の時期。 |
| 火事のときの行動 | 消火、119番への通報、避難誘導の手順。 |
| 消防機関との連絡 | 届出や報告、訓練の通報など、消防署とのやりとりの担当と方法。 |
| 工事中の火気管理 | 改装などの工事をするときの火気の使い方や監督のしかた。 |
| 管理権原者と防火管理者の業務 | 誰が何に責任を持つか。防火管理の業務を外部に委託している場合は、その範囲。 |
札幌市は、消防計画を簡潔でわかりやすく、実行しやすいものにし、従業員が見られる場所に内容を掲示するよう案内しています。東京消防庁の中規模用には、震災対策やその他の災害への対策の章もあります。
出典:札幌市「消防計画に定める事項について」、東京消防庁「中規模用消防計画 解説」(PDF)、同「小規模用消防計画 解説」(PDF)(いずれも2026年9月28日確認)。
消防計画のひな形・作成例(小規模・中規模・大規模)
多くの消防局が、空欄を埋めて使える作成例(ひな形)を公開しています。建物の規模や、テナントか建物全体かで様式が分かれます。
| 公開元 | 公開している作成例 | 補足 |
|---|---|---|
| 東京消防庁 「消防計画の作成」 | 大規模用、中規模用、小規模用、小規模テナント用、建物所有者用、共同住宅用、一時使用店舗等 | Word版・PDF版と解説あり。建物の用途や規模を入力して計画を作る支援ツール「Fire Planner Pro」もある。 |
| 仙台市消防局 「消防計画作成(変更)届出書」 | 防火管理:大規模用、小規模用、テナント用、共同住宅用、新築工事中の建築物用。防火・防災管理:大規模用、テナント用 | 届出書の記載例と自主点検票もある。 |
| 名古屋市消防局 「消防計画作成例について」 | 特定用途・非特定用途それぞれのビル用とテナント用。防火・防災管理はテナント用 | 中消防署が作った作成例で、ほかの消防署や市町村では使えない場合があると案内している。 |
| 福岡市消防局 「防火・防災管理関係」 | 共同住宅用、小規模防火対象物用、中規模防火対象物用、防火・防災管理用、テナント用、新築工事中用 | 消防計画作成要領(PDF)もある。 |
| さいたま市消防局 「消防計画の作成例等について」 | 小規模用、中規模用、共同住宅用、全体についての消防計画、新築工事中用 | 原本(Word)、作成例(PDF)、作成チェック項目がそろう。 |
| 札幌市消防局 「消防計画に定める事項について」 | 消防計画に定める12の事項の説明 | 消防計画の内容を従業員向けに掲示する例(PDF)もある。届出は電子申請で受け付けている。 |
| 日本防火・防災協会 「各種届出書と消防計画作成要領」 | 中規模用、小規模用、共同住宅用、全体についての消防計画、既存建物の工事中用、新築工事中用 | Word版とPDF版、チェック項目あり。 |
どの様式を使うかの目安は、消防局ごとに示されています。
- 東京消防庁:小規模用は、乙種防火管理者を選べる建物・事業所が対象です。中規模用は、大規模用に当たらず、甲種防火管理者が必要な建物・事業所が対象です。テナントの事業所で床面積の合計が3,000㎡以上、収容人員が特定用途30人以上・非特定用途50人以上なら、大規模用を使います。
- さいたま市:延べ面積3,000㎡未満で、収容人員が特定用途30人・非特定用途50人未満の建物などは小規模用です。延べ面積3,000㎡未満で人数がそれ以上の建物や、延べ面積3,000㎡以上で人数がそれ未満の建物は中規模用です。
甲種と乙種の違いは防火管理者の選任と講習で説明しています。ひな形は地域の決まりに合わせて作られているため、建物を管轄する消防局のものを使い、迷ったら消防署に相談します。どの作成例も、そのまま出すのではなく、自分の建物の実態に合わせて書き直すよう案内されています。
出典:表の各リンク先、東京消防庁「小規模テナント用・自らの事業所を持たない建物所有者用 消防計画作成例」、同「大規模用消防計画 解説」(PDF)、同「中規模用消防計画 解説」(PDF)、同「小規模用消防計画 解説」(PDF)(いずれも2026年9月28日確認)。
避難訓練の義務と回数、消防署への通報
防火管理者を選んでいる建物では、消防計画に基づいて消火・通報・避難の訓練を行います。回数は建物の用途で変わります。
| 建物の用途 | 消火訓練 | 避難訓練 | 通報訓練 |
|---|---|---|---|
| 特定用途(飲食店、物販店、ホテル、病院など) | 年2回以上 | 年2回以上 | 消防計画で定めた回数 |
| 非特定用途(事務所、共同住宅、学校、工場など) | 消防計画で定めた回数 | 消防計画で定めた回数 | 消防計画で定めた回数 |
- 特定用途の年2回以上は、消防法第8条と消防法施行規則第3条第10項に基づく義務です。
- 非特定用途の回数は法令で決まっていないため、消防計画に書いた回数で行います。福岡市の中規模用の作成要領では、非特定用途を年1回以上としています。
- 訓練の通報:訓練の前に、消防署へ通報します(消防法施行規則第3条第11項など)。東京消防庁は電子申請か「自衛消防訓練通知書」、札幌市は「自衛消防訓練通報書」、福岡市は「消火・避難訓練通知書」で受け付けています。
- 仙台市は、消防職員の立ち会いや実際の119番通報を希望する場合、電子申請ではなく書面で報告するよう案内しています。
出典:東京消防庁丸の内消防署「自衛消防訓練を実施しましょう」、札幌市「消防計画に定める事項について」、札幌市「自衛消防訓練について」、仙台市「消防訓練実施(計画)報告書」、福岡市「中規模防火対象物の消防計画作成要領」(PDF)(いずれも2026年9月28日確認)。
消防設備点検の結果の扱いと、点検会社への相談
消防計画には、消防用設備等の点検と整備のことも書きます。点検会社に頼む法定点検と、計画の関係は次のとおりです。
- 点検の回数:機器点検は6か月ごと、総合点検は年1回です。
- 結果の報告:点検結果は、特定用途の建物は1年に1回、非特定用途の建物は3年に1回、消防署へ報告します。札幌市は、点検が終わってからおおむね15日以内に出すよう案内しています。
- 不備の改修:東京消防庁の解説は、点検で不備が見つかったら管理権原者に報告し、速やかに改修するよう求めています。
- 記録の保管:点検結果などの記録は「防火管理維持台帳」にまとめて保管します。
点検の回数と報告の時期は消防設備点検の義務と回数で詳しく説明しています。
消防計画づくりを手伝う点検会社もあります。てんけんどこの掲載会社では、黒澤防災(仙台市)が消防計画書の作成業務と、工事中の消防計画や変更の届出の提出業務を、トータルメンテナンス(宇治市)が消防計画の作成・提案と消防訓練の企画・実施を、公式サイトで案内しています。どちらも料金は公開していないため、点検の見積もりと合わせて問い合わせます。届出の名義は防火管理者のままなので、内容は防火管理者が確かめてから出します。
出典:札幌市「消防計画に定める事項について」、東京消防庁「小規模用消防計画 解説」(PDF)、黒澤防災「事業内容」、トータルメンテナンス「サービス」(いずれも2026年9月28日確認)。